10

亀裂が走った。恐らく人間の良心と呼ばれるものだ。

フィーリアの愛は、子供が親から求める無償の愛情に他ならない。
結局私たちは似た者同士だった。
このまま彼女を孤独という檻で囲ってしまえば、容易くフィーリアを意のままに出来る。
暗い誘惑だった。その血を吸って吸血鬼の下僕にせずとも、彼女を手に入れられる。
私も愛していると囁きさえすれば。

それをしないのは、半分は帳尻合わせの為。
叶わぬ願いだとしても、吸血鬼ではなく人間でいたかった。
もう半分は、保身の為。種族の壁が容易く越えられるわけがない。
追放される名目を与えることにはなるまいか。それどころか“退治”の気運を高めることには――。

(何を恐れる。如何に人間が束になってかかろうとも闇の王の眷属に敵う筈もない)

どこからともなく不敵な声が聞こえた。

(それで何が残るというのだ)

人間の仲間に入れて欲しいわけではない。
ただ自由に生きられる場所が欲しい、と願っていた筈。
さりとて無垢な子供ではなく、飛ぶ鳥の労苦を理解し、真の自由の存在を疑い続けていた。
それでも足掻くのは、父に比べれば生まれて間もない時分であるからか、
それとも諦めたその時から魂の腐敗が始まっていくのではないかと恐れる故か。



平穏が続いた。嵐の前の静けさであるかのように。
水面下では如何なる謀略が飛び交っているのかは定かではないが、表面上は波紋すら湧き立たない。
しかし、王女に近しい者であれば、あれほど和やかであった王女とその周囲の空気の変化に気づいたであろう。

フィーリアは変わった。
試練の半ばを過ぎて、執政官に委任していた政務を自ら執り行うようになった。
さすがにすべて、とはいかぬものの、外交や儀礼の他に徴税や裁判にも深く関わるようになり、
己の意向を強く押し出すようになった。代わって、影が薄くなったのが執政官ヴィンフリートだ。
相変わらず、政務に携わる臣下としては最も影響力のある人物だが、表に出ることが格段に少なくなった。

王女の不興を買い遠ざけられた、という噂が実しやかに囁かれている。
しかし、ヴィンフリートは変わらず執政官と云う要職に就いて、辣腕を振るっている。
これは執政官を退けて王女の寵愛を得る好機と讒言を届けた者も居たようだが、逆に退けられる始末。
これはどうしたことかと人々は首を傾げた。

良い事ではないか、と喜ぶ者は王家の復権とありし日の国の再生を願う者。
女が政治に口を出すなど亡国の兆し、と嘆く者は王女の即位で日の目を浴び無い者。
成る程高貴な方々というものは世の流れに操られるマリオネットのようだと、
右往左往する様を冷めた目で見る者が王女の配下に幾ばくか。
そして王女その人は孤独の檻に引き籠ったままだった。

「変わった……? 私が?」

あどけない表情で首を傾げるフィーリアの手元には、今年の葡萄の収穫高を知らせる文書があった。
自領の情報ではないそれは、未だ宰相への支持を表明する貴族の土地のもの。
密偵から齎され、かの貴族の国力と財力を推し量り、外交の材料や工作を円滑に進める為のものだった。
今しがた、変わられましたなと感慨深げに問いかけたのは先王の友であった人だ。

「はい。お強くなられた」

言葉とは裏腹に、シルヴェストルの顔は晴れない。
何を考えているのかはある程度想像はつく。
王女が、嫁入り前の娘が、花嫁修業よりも政治に明るくなってしまうとは嘆かわしい、と言ったところか。
眉間に皺が寄っている顔は、似ていないと息子共々公言していながら、ヴィンフリートとよく似ている。
フィーリアは少し考えてから、当たり障りのない言葉を口にする。

「そうかしら。自分ではわからないものだけれど」

兄を前にしていたらもっと喜ばしい顔をしていたに違いない。
落胆や失望を隠せない所はやはり武人である。シルヴェストルはそれ以上何も言わなかった。
不意に話題を変える。

「あれはお役にたっておりますか」

あれ、というのは彼の子息のことだ。近況一つ素直に聞けばよいものをと思う。
男と云うものは実に面倒な生き物だ。フィーリアは微笑む。

「勿論よ」

「然様ですか。これで先祖への面目も立つことでしょう」

彼の耳にも王女と執政官の確執の噂は届いていることだろう。
本当はご機嫌伺いなどではなく、噂の真偽を確かめに来たのではないだろうか。
恐らく故意に流した人物がいるのだろうが、火消しをするまでも無かった。
噂は既に別の噂に塗り替えられ、流行遅れとなってしまっている。

「シルヴェストル卿の王家への忠誠には、亡き父共々感謝していますわ」

「…勿体なきお言葉です」

そう言う彼の領地も領主その人より詳しく把握している。
そんなことをおくびにも出さず微笑めるようになったのだから、確かに変わったのだろうと思う。
少し前だったら、小父様小父様と慕っていた彼の来訪は政治的な意味を越えて嬉しかった。
今や、辞去するに至っても配下の騎士に送らせるのみで、寂寥の一つ湧くことも無い。

むしろ一人になることに安堵さえ覚える。
今日も騎士らしい大きな背中を見送り、間を隔てるように扉が閉められると安らかな気持ちになった。
不思議な気分だった。あれほど一人になることを恐れていたのに。

「姫様……」

おずおずと云った体でエクレールが休憩を勧める。
フィーリアは微笑んで謝辞する。目が合うと、エクレールはばつが悪そうに目を逸らしてしまう。
まるで腫物でも扱うようなそれに少しばかり胸が痛む。

(これは、喧嘩なのかしら…?)

実の兄ともしたことのないそれは新鮮だった。
しかし、それ故に修復の仕方を知らない。微笑めば微笑むほどエクレールは遠ざかっていく。
けれども、あの日言ったことを撤回するつもりは無い。

(意地を張る私を、嫌いになったのかしら?)

どれだけ自分が空虚な存在だったか思い返される。
孤独と引き換えに手に入れた静寂と希望。それは輝ける宝石のようなもの。
一体何を恐れていたのだろうか。

「エクレール、ディトリッシュを呼んでくださらない?」

忠実な侍女は複雑な表情を見せながらも、命令を実行する。
再び訪れる静寂。羊皮紙のめくれる音と衣擦れの音が何と心地よい事だろうか。
多くの騎士が各地に散っている。今城を攻められたらひとたまりもないだろう。

けれども知っている。武力を以って革命を成し遂げるには、王女の声望は高まりすぎていた。
引いては王家への尊崇の念が徐々に蘇ってきているということだ。
拙いながらも着実に領地を発展させてきた王女の手腕も理由の一つだが、
眠りから覚めた黒貴族への恐怖心もまた大きな理由の一つだった。
王家は再び人々の拠り所となっていた。故にフィーリアは各地に騎士を派遣することを決めた。

(世の流れなんて気まぐれなものよ)

それがいつまた裏表が変わるかわかったものではない。
失望する時期は当に過ぎた。今はそれを如何に読み、乗っていくか。
それを操作できるほどの力があれば、とも思うが、それは史上の英雄や覇者にさえも容易いことではない。
焦っては駄目と自分に言い聞かせ、各地に散った騎士から情報を受け取る毎日である。

力があるということはそれだけで、自由だ。
他者の顔色を窺うことも、出自や身分に縛られることも無い。
羨ましいと思う。黒貴族と親交を持つようになって、斯様に思うようになった。
愛しい人の面影は無きに等しく、会うたびに自分が蝕まれていく感覚がある。
けれども、彼の者を覆うヴェールの内側を少しでも垣間見ることが出来れば、
また一つそれは王女の強みとなる。もしまた騎士王の偉業をなぞることができれば、
貴族の支持など意に介することなく、万人がその者を王と認めるだろう。

(小娘の愚かな夢物語だわ)

出来るはずがないし、ましてや成し遂げようなどと露ほどにも思ったことは無い。
時に戸惑うほどの優しさや労わりを示してくれるが、相手は黒貴族なのだ。
その冷酷さ息を呑むほど恐ろしい。

「姫様、ディトリッシュ殿をお連れしました」

待ち望んでいた時がようやく訪れる。
エクレールに続く黒衣の影に自然と笑みが零れた。
何を言われずともエクレールは辞去し、フィーリアは喜びを隠すことなくディトリッシュを出迎えた。

「お召しにより参上いたしました。ご機嫌麗しゅう」

「貴方が戻って来るのが待ち遠しかったわ。さあゆっくりとお話ししましょう」

近し過ぎるという声ももう聞こえてこない。
政務に注力することで結果的に過ごせる時間は短くなってしまった。

「私も心待ちにしておりました。お加減はよろしいですか。
前にもましてより政務にお励みのようですが、私に出来ることがあれば何でも仰って下さい」

「ありがとう。でも、今はこうしてお話ししてくれればそれでいいのよ」

今はもう他愛のない話を聞いてくれる相手もいない。
血を与えることを咎める者もいなければ、危険だと諌める者もいない。

隠れ潜むように長椅子の影で並びあって座り、そうして血を分け与えた。
逢瀬の度にそうした。まるで厳かな儀式であるかのように。
彼には感謝されていた。巧妙に隠してはいたが吸血衝動に哀れなほど苦しんでいるのは知っていた。
だがフィーリアは逢瀬の度に自分の浅ましさを強く感じるようになった。

本当はディトリッシュが自身の出生を忌まわしく思っていることを知っていた。
血を与えるということは、彼が苦心して作り上げてきた人間としての自制心にひびを入れることだ。
尽くしてくれる騎士に報いたいと都合の良い口実を作り、卑しい望みを叶え遂げようとしていた。

躊躇いと欲望の狭間で揺れる彼を見ると、心がざわめく。
肌が粟立ち、鼓動が早くなる。自分だけのものにしたいと心から思う。
唇が指に触れる感触を、仮面を取り払われた剥き出しの素顔を、狂おしいほどに望んでいた。

「そのようなお顔をなさってはなりませんよ」

顔を上げたディトリッシュが苦笑しながら云った。

「私はどんな顔をしているの?」

「男に言わせるものではない、という答えで納得して頂きたいのですが」

「教えて。言ってくれないと、気を付けようがないわ」

「…困った方ですね」

吸血の後、どこか疲れた風情なのは心が削られているからだろうか。
ディトリッシュは力無く微笑む。
その頬にそっと触れた。顔色が悪い気がしたのだ。

「何か、思い悩むことが…?」

「自由になることは何と困難なことかと。殿下はお悩みにはなりませんか?」

「自由は私にとって遠い世界のことよ。
永遠に届かない宝物よりも、愛しい人と寄り添う時間が真実だわ」

これほど近いのに遠い。彼はずっと霧の中にいるよう。
それが悲しい。胸が張り裂けそうになる。
けれどもそれ以上求めてはいけない。力の無い者は何も求めてはならないのだ。
王女としての義務を果たしていない者は何も与えられはしない。

「私の気持ちを知っているのに何も答えてくれないのね。それでも幸せだわ」

「殿下」

「また、フィーリアとは呼んで下さらないの?」

「畏れ多いことを」

「恋人のように主君の名前を呼ぶのもきっと自由の内に入るわ。
お願い。これだけを叶えてくれたら、今日はもう我儘は言わないわ」

フィーリアと耳元に囁く声。

「まったく仕方の無いフィーリア――」

ああ、何と甘美な響きだろうか。私は今、この瞬間の為だけに生きている。
そっと寄り添うと、肩から背中に流れるよう腕が滑る。
頑なに愛の言葉を囁いてくれない男の腕はどこまでも暖かかった。



腕の中にいる少女を如何にすればよかったのか。
臣下として分を弁えることも果たせず、想いに応えることも叶わない。
何に付けても半端な男だと呆れるほかない。

(幸せ、か)

歪な幸せだと思った。フィーリアの孤独が生み出した幻影のようなものだ。
かと言って、フィーリアの願いを跳ね除けることなど出来るわけがない。
王家の信望は高まりつつある。それこそ宰相のそれと拮抗するほどに。
しかしその先にフィーリアの幸せがあるのだろうか。

富と栄華が齎されれば幸せか。
何不自由ない場所で心を凍らせたまま生きるのが幸せか。
さりとて、誰の庇護も無く生きていられるほどフィーリアは強くない。
理解しているからこそ、自ら自由から遠ざかるのだ。
ふとフィーリアの体が離れる。

「もう戻らないといけないわ。すぐにお客様がいらっしゃるの」

これでは体を休める時も無かろうに。
水を求める為に砂漠を奔走しては元も子もない。
フィーリアは自覚が無いだけでかなり消耗している。誰の言葉でも制止は効かない。
内情を知らない者からすれば勤勉な統治者だ。

「それではお送りしましょう」

が、それは虚像に過ぎない。
内面は変わらず脆い少女のまま。使命感や野心の欠片も無く、
ささやかな見返りを求めて、身をすり減らしながら、玉座の道をひた走っている。
本当にこれで良いのだろうか。

「どうかご無理をなさらぬよう」

「これも王女の努めですから」

度が過ぎているのだ。宰相に対抗するだけならば名門と呼ばれる貴族に接近すればよい。
手駒が欲しければ、不遇をかこつ騎士に声を掛ければよい。
それが何故、黒貴族と交わるのか。秘匿し、臣下に猜疑の目を向けられてまで、闇の首魁と会うのか。
解せぬのはディトリッシュも同じ。何よりもフィーリアの身が気がかりでならなかった。

「三つ畑を耕せば一つ実りを得ることが出来る――」

フィーリアは民草に伝わる寓話の一節を諳んじる。
勤勉を説いた言葉だ。

「でも畑も休ませなければ実りを得ることが出来ないと聞いたわ。
明日の糧も得ることが出来なくなった人は死んでしまうしかないのかしら」

「殿下」

「強ければ余所の畑から実りを奪うことが許される。
心が咎めるのならば、一つの畑から実りをいくつも生み出せばいい――。
でも私にはそんな力は無いわ。古の偉大な王は自由だったのかしら」

力さえあれば。力があれば何をしても良い。出来ぬことなど無い。
だがそれは覇者の理屈だ。あの男の理屈ではないか。

「それは、人の理屈ではないでしょう」

「そうね。貴方には分かってしまうのね。貴方のお父様、黒貴族の言っていた言葉よ」

「殿下、父の言葉に耳を傾けてはなりません。あの男の言葉は毒薬そのもの。
身を蝕み、滅ぼしていく。黒貴族にとって人間の尽くは玩具に過ぎないのです」

「わかっているわ。でも、でも、私に力があれば誰も失うことは無いでしょう。
何の憂いも無く愛する人の傍にいることだってできるわ」

「だから、父に会うのですか?
皆の反対を押し切ってまで、身を危険に晒してでも手に入れなければならないものがおありですか?
それとも、父の言葉はそれほど貴方にとっては惹かれる物なのでしょうか」

「それは、違うわ。私は、ターブルロンドの王女ですもの。そんな、ありえないことです」

「真実を仰っていると、騎士王に誓えますか?」

瞳が逸らされたのをディトリッシュは見過ごさなかった。
既に毒はフィーリアを侵している。
賢明な臣下もおらず、心も弱り果て、少女はあまりにも無防備だったのだ。

(何ということを――)

「私は王家の一人として、ただ黒貴族に対抗する為に―――」

「殿下!」

声にならない悲鳴。後悔した時にはフィーリアは既に身を固くしていた。
違う。嫌気が差したのはフィーリアにではない。
声を荒げてしまったことへの非礼を謝罪し、努めて優しく声を掛けた。

「殿下。私は父の為人を存じております。長らく傍で見てきたのです。
故にわかります。あの男は奸計を弄し、人の世に災いを齎そうとしております。
この場で進言することをお許しください。何とぞ、黒貴族との交わりはお絶ち下さりますよう」

「でも、あの人は、私に靴をくれたのよ…」

靴、と思わず聞き返す。

「私の願いを、笑ったりしないで叶えてくれたの……優しくしてくれたのよ。
お父様だって、こんなことしてくれなかった……だから…」

同じだ。何もかも――。愕然とした。
今にも泣き出しそうなフィーリアと過去の自分が寸分違わず重なる。
孤独と弱さに付け込み、何と残酷なことを。

(奪われてしまう)

心の隙間に入り込み、甘い言葉を囁いて籠絡せしめるのは、かの男が好んで使う手。
このままでは、孤独の檻に囚われたフィーリアはあの男の与えるまやかしの愛情に溺れてしまうだろう。
かの慈愛こそ真の毒。この身を未だに苛む毒そのもの。

「殿下、いえ、フィーリア。よく聞いてください」

「ディトリッシュ――」

「貴女を責めるつもりはありません。
お近くに居ながら貴女に手を差し伸べようともしなかった我々の咎です。
お許しください。私は、貴女から逃げようとしていました。
貴女の求めるものを与えられる自信が無かった。
貴女は既に多くのものを私に与えてくださったと云うのに」

良いではないか。それがたとえ自分の求める愛情ではなくとも。
必要とされているのは変わりないのだから。
これから過酷な人生を歩む少女に一時の安らぎさえも与えられないというのか。

フィーリアを愛している。
居場所を与えてくれて、分け隔てなく接してくれて、全幅の信頼を置いてくれた。
忌まわしい性も血筋も受け入れてくれて、心無い声から庇ってくれた。
これ以上、何を望む。

「貴女が望んで下さる限り、お傍にいると誓います。二度と独りにはさせません。
だから、もうこれ以上ご自分を追い詰めるのはお止め下さい」

「でも、私は女で、何一つ満足にこなすことができない愚かな人間なの。
王女としての義務を果たさなければ、王宮を追い出されてしまうわ。
何も出来ない私は、何も手に入れてはいけないのよ」

「目を開けて。ご自分を卑下なさらないで。
貴女はもう無力な少女ではありません。こんな小さな体で戦ってきたではないですか。
そのような貴女だからこそ、騎士たちは剣を捧げているのですよ」

「忠誠なんて…。いつ、変わってしまうか。
エクレールには嫌われてしまったし、ヴィンフリートにだって愛想を尽かされてしまったわ」

「勇気を持って、彼らとお話しなさいませ。
たとえ最後の一人になろうとも、私はお傍を離れません」

じっと涙を堪える姿が苦しいほどに愛おしかった。
全てを手に入れられたらと心が揺れる。
だが、たとえ弱くとも、世界に対して余りにも無力だとしても、
その心だけは何者にも奪われてはならないのだ。

「出来ないわ。誰に言われようとも、二人からの言葉は耐えられない。
貴方さえいてくれたら生きていけるわ。お願い、その言葉を信じさせて」

「では、約束を。自ら檻の中に籠られるのはお止め下さい。
たとえその身が不自由であろうとも、心は永遠に自由であるのです。
彼らが本当に貴女を見捨てられるとお思いですか。彼らの心に邪な欲望が入り込むとお思いですか」

「…わかったわ。約束するわ。二人ともう一度話してみる。だから、お願いよ」

「ええ何度でも。私は貴女のものです。愛しいフィーリア」

胸に飛び込んでくる少女を受け止めた。
この人だけは守ってみせると胸に誓いながら。



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